こんばんは、北区議会議員の佐藤ことです。
友人のかるまさん(風間暁)と、池袋シネマ・ロサで映画『アディクトを待ちながら』を観てきました。
あらすじはこちら。
数々のヒット曲を持つ大物ミュージシャン、大和遼が覚醒剤と大麻の所持で逮捕された。人々は驚き、落胆し、大きなニュースとなった。あれから2年。依存症患者らで結成されたゴスペルグループ「リカバリー」が音楽ホールでコンサートを開こうとしていた。そのメンバーには大和の名前があった。あの事件以来、沈黙を守ってきた大和がついにカムバックする。出演の知らせを聞いたコアなファンが続々と会場前に集まった。薬物、ギャンブル、アルコール、買い物、ゲームといった依存症者で構成される依存症ゴスペルグループ「リカバリー」。メンバーたちは互いに支え合い、スリップ(依存性物質に再び手を出すこと)することなくコンサートにこぎつける。しかし、大和は開始時間を過ぎても現れない。逃げたのか?それともスリップ?果たしてコンサートは開催できるのか——。
私は鈍いので途中までピンと来てなかったのですが、この映画では依存症の回復に重要な、「依存症者を信じて待つこと」を追体験できるようになっているんですね。(タイトルからしてもそう)(気づけ)
映画の中でさえ、信じて待ち続けるのはこんなに難しいのかと、ソワソワソワソワしながら見ていました。これが現実で、依存症者が自分の家族や友人、大切な人だったら…と思うと、回復をただ待ち続けることの難しさを改めて感じました。
主演の高知さんはじめ、この映画には実際の回復を続けている依存症者、またその家族を多数起用されているそうです。
元々は4日間のワークショップの中でできた短編映画を、田中紀子さんが「長編にしよう!」と声をかけてこのような作品になったんだとか。
ネタバレを避けながら感想を書くと、、
途中途中もグッとくるシーンはたくさんあったのですが、
やはり最後に高知さんが登場して以降のシーンはもう泣きっぱなしで。嗚咽を漏らさないように必死で震えながら泣いてしまいました。元々涙脆いけど映画館であんなに泣いたのは初めて。上映後も映画館のあちこちからすすり泣きが聞こえてきました。
上映後のアフタートークで、実はそのシーンは監督が仕掛けたサプライズで、すべて台本にはない展開の即興劇だと聞いて驚きました。
でも一方で、「ああ、だからあんなに震えたんだな……」と納得もしました。こんなにリアルにやらなくていいよ!しんどい!とこちらが思うくらいの展開と演技でだったので。
あまり詳しいことを書くとネタバレになると思うので書きませんが、気になる方はぜひ観に行ってほしい!私ももう一度観たいです。
https://addiction.report/NaokoIwanaga/nakamurasayaka-2
依存症、特に薬物依存症に対しての偏見やスティグマは、この映画の中でもいろいろな人物の発言や態度で示されています。
薬物依存症は、対象が違法薬物の場合は即犯罪です。
通報を恐れて、支援に繋がることも難しい現状があります。
また、私たちも学校で「ダメ、ゼッタイ。」と教わるので、違法薬物に手を出したらもう二度と回復できない、危ない人たちだという印象が刷り込まれています。
違法薬物で俳優が逮捕されると、出演シーンがカットされたり、放送や上映が中止されるケースも多々見られます。
でも実際は、違法薬物の依存症でも回復はできますし、社会制裁が厳しすぎるせいで居場所がなくスリップに繋がってしまうこともあります。
依存症対策に真に必要なのは社会的制裁ではなく、治療。そして周りの理解と連帯。依存症は「孤独の病」とも言われていて、処罰や謹慎でさらに社会から孤立させては、回復には絶対に繋がりません。なのに、そんな基本的なこともまだ伝わっていない。
海外では「ハームリダクション」と言って、薬物使用を低減するのではなく、薬物使用による二次被害(健康被害や社会的弊害)を低減する公衆衛生政策の理念が広がりつつあります。
例えば、病院内で消毒された注射器で薬物を使用できることや、相談や治療に繋がりやすくするために違法薬物所持・使用を非犯罪化する試みなどがあり、有効性が証明されています。
残念ながら日本では大麻が所持だけでなく使用も犯罪化される(大麻使用罪)など、薬物依存症への対策が逆行しているのが現状です。
また、俳優の出演には気を使う一方、薬物問題の報道では違法薬物の写真や映像が使われるなど、スリップに繋がりかねないような報道が平気でされており、マスコミの理解度もまだまだ低いと言わざるをえません。
こういった現状からしても、『アディクトを待ちながら』は、依存症者やその家族の姿をセンセーショナルではなく誠実に描いた稀有な作品だと感じます。
ぜひ多くの方に観てほしい。
池袋シネマ・ロサが満席となったことで、上映が一週間延長になったそうなので、この機会にぜひ足を運んでみてください!
ちなみに余談ですが、実は私は大学時代は心理学部だったので、依存症について脳科学の分野からアプローチをしていました。でも、依存症者を取り巻く実態については、かるま(風間暁)さんに出会うまでほとんど理解していなかったと思います。かるまさん、私の目を開かせてくれて本当にありがとう。
というわけで、分かりやすく書かれたこちらの本もぜひ。
それでは今日はこのへんで。